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director's note

■「ちょっとした夢のはなし」について
 
 「楽しき旅路」はかつて2回ほどとりあげたことがあって。一度目は「オーバードライブ」というタイトルで上演し、二度目は「小さく楽しい家族旅行」というタイトルでの上演でした。まあ、このことからもわかるように、つまりは家族ドライブの話です。はっきりいって地味なお話です。物語になにがあるわけでなし。でも、僕はどうしてだかこの家族の小旅行にひかれてしかたないのです。
 それはそうと、今回は「大学生」と一緒に創作にのぞんでみたいと思っています。僕にとってやつらは、もう心の底からいらだつほどの存在です。夢と現実の狭間にたたされていることを自覚しつつも、これといって何をするでもなく毎日をすごす。まあ、全ての人がそうなわけではないでしょうが、つまり僕はそうだったのでした。熱く理想を語る一方、さめたふりして現実を論じる。実はどっちも理解できていなかったとわかったのは、卒業後あじわった数度目の挫折のあとでした。
 自分は誰に守られ、どこを目指しているのか。この物語は、そんな話なのかもしれません。そして、人を守るとはどんなことなのか。家族とはどんなものなのか。彼・彼女たちとじっくりつきつめてみたいと思います。もしかしたら、この世には理想も現実もないのかもしれません。ただ、誰かに守られ、やがて誰かを守ろうと決意するだけなのかもしれません。それでもきっと僕らは日々、なにかとなにかの間でもがき苦しんでいます。わかった顔をしてやりすごしています。で、今回はそんなお話に、「ちょっとした夢のはなし」というタイトルをつけてみました。
 で、さらに今回は、「中野成樹+オオカミ男」というユニット名で作品を発表してみようと思っています。何かと何かの間。大化けへの願い。大学生とやる今回にうってつけじゃないかと(笑)
May 2008 中野成樹



■「家族でお食事夢うつつ」について

ワイルダーの超がつくほど有名な短編「ロングクリスマスディナー」。
まあ、でも、いまやそれほど有名じゃないのかな?
昔はほんと、あちこちの養成所で必ずやっていたという話ですが、確かに最近あんま聞かないかもしれない。
どうして?どうして?が、養成所でこれがたくさんやられてきた理由って何だろう?
まず、いわゆる「素舞台」の指定だから物理的にお金がかからない。これは大きいかもしれない。
で、あとは登場人物がそれなりにいるから生徒(役者)さんの人数もかせげるし、上演時間が50分くらいだし。うん、ほんと、養成所の発表ために書かれたのはないかと疑ってしまうくらいの作品です。
けど、まあ、きっとそれだけじゃないでしょう。
養成所の先生方はそんな数字だけでこの作品を選んだはずがありません。
だって、この作品には「演劇」ならではの魅力がぎっちりつまっていますから。
90年にわたる4世代の家族の物語を、わずか50分で駆け抜けるこのお話。もう役者は大変です。
生まれたての子供の役がわずか5分後には青年の役になってますから。
で、5分後にはおじいちゃんになって、孫をあやしたり。
このスピード感“できちゃった婚”を超えてます。
でも、そんなある種バカバカしいダイナミックさが僕は大好きで、演劇って嘘なんだけど本当でもあるという基本中の基本をあらためて感じさせてくれる作品です。
でも、実際、どうやればいいんだろう?
今回に限っては無理にタイトルを変えなくてもいいかなという気がしましたが、タイトルから受ける印象が観劇後にぐっと深まる感じをイメージして、なんとも、ぶっちゃけダメな感じとタイトルとなりました。
うん、ぐっと深まるかな? まあ劇場に来て下さい。生と死と家族と居場所の話です。

November 2007 中野成樹



■「遊び半分」について


今回の原作の「西の国のプレイボーイ」は、
今からちょうど100年前にアイルランドというところで書かれた本です。
もちろん時代も文化も今の日本とはまったく違う感じです。
でもそこに僕が日々感じる、大切にしたいなって思うことや、
素敵だなって思うことや、なんだか嫌だなって思うことが
だいたい整理されていて(それもおもしろい物語にのっかって)、
ほんとに「これって一体どういうことなんだろ?」と思ったのです。
うまくいえなし、それにいまさらなのかもしれないけれど、
今にオリジナルな感覚や出来事なんてもはや存在しないんだなと思いました。
むかしからどこでもみんな同じ感じでやってきたんだなあ、と。
そんな「むかしからどこでもみんな同じ感じ」を
僕は『遊び半分』という言葉ですくいとってみようと思いました。

たとえば「遊び半分でした」などといわれてしまうある行いがあったとして。
でも、おそらくそういった人は、
その時はその行いにたいしてひどく真剣だったに違いなくて。
だからこそ「遊びでした」ではなく「遊び半分でした」になるわけで。
つまり「遊び半分でした」ってのは、
かつてはそれに真剣でしたという証言みたいなものであって。
「あん時は真剣だったねえ……何考えてたんだろ?」
みたいなことって山ほどあって、
そんなのに囲まれ、そんなのをひきずって僕らは毎日を暮らしている。
そう、「今は真剣になれないかつて真剣だったこと」。
その真剣はどうして真剣じゃなくなっていったのか。
自分の意志、他人の圧力、環境の変化、まあ、いろんな理由があるはずで。
あきらめなきゃいけない真剣。いますぐ忘れたい真剣。すぐに飽きちゃった真剣。
で、その真剣の熱がさめきらない時のボーッと唖然としてしまう感じ。
そんなことが延々と繰り返されて、僕らの日常が形づいているのかもしれなくて。
で、あいつらの日常もそんなだったんじゃないかな、とも思って。
というか、「西の国の〜」を読むとそうとしか思えなくて。

まずは、あの時代のあの国のあいつらを馬鹿にしつつほめ讃えようと思います。
でも、まあ、それってつまりは……。
で、いづれ結局……。ね。


中野成樹




■「短々とした仕事」について、リフレイン

競馬の予想は難しい。
何が難しいかって、
時間をかけて考えれば考えるほど本命にいきついてしまう。
それで本命があっさり勝つのなら何の問題もない。
が、そうでない場合もたくさんあって。
だから、競馬の予想で大切なのは、
実は予想にかける時間の問題なんじゃないか、とか。
結局は、どこかで見切りをつけて、自分と馬を信じて勝負しなきゃならないわけだし。

競馬を芝居、予想を稽古、本命を正統なやり方、勝つをうける、馬を仲間にかえて考えてみる。
けっこうそれっぽい文脈になってやしないか?

そんなわけで、予想の時間を極端にへらしてみた。
勝てるかな?

2006.12.25 中野成樹



■「短々とした仕事」について

短い稽古期間、大体7日間くらいだろう。
で、短い作品、大体40分くらいだろう。
まあ、創ってみよう。
いつもとやり方が違うから、違う人を仲間にしよう。
定期テストみたいに、定期的にやっていこう。
そう、きっとテストなんだろうな、これは。
落第しないように頑張ろう。
一夜漬けでどうにかなるところとならないところがあるだろう。
でも、大事なのはテストの先にあることだ。
でも、テスト自体も出来る限り楽しんでしまおう。
で、これを、短々とした仕事、と名付けよう。
淡々とこなせればいいけど、きっと大変だろうなあ。

2006.10.15 中野成樹



■ 『暖かい氷河期』演出ノート[中野成樹]

ゴルドーニの「二人の主人を一度に持つと」を読んだ。くだらない話だった。 「なんだよ、男装の麗人って!」「しかも、それに誰も気付かないって!」これが初見での率直な感想だった。 しかし、同時になぜだかこの戯曲に強く心をひかれもした。心ひかれたのは、そのくだらなさ、おおらかさにでもあるが、もちろんそれだけではない。 そこに「恋のため無茶をする人間」がいたからである。および、「無理して働く人間」がそこにいたからである。
 僕らは日々、どうしてだが「無理して」しまう。そして、テンパったあげく、ついつい「無茶して」しまう。なんで無理しちゃうんだろう?  無理しなきゃいけない理由は何なんだろう? で、なんで無茶しちゃうんだろう? 無茶の先に何を求めているんだろう? いまの僕らの生活は、世界のあちこちと比べれば、そして長い歴史を振り返れば、間違いなく恵まれているはずだ。なのに、とかく今のこの世は住みにくい。 もしかすると、いまだ世界は氷河期のままなのかもしれない。あの頃とほんのちょっと何かが違うだけで、毎日の暮らしは決して楽じゃない。日々生きることに必死になっている。どうにかしたい、どうにかなりたいと、未来を夢見れずもがき苦しんでいる。こうしてタイトルは決まった。
 しかし、ゴルドーニさん。あんたもすごい本を書いたもんだ。まったく今の日本だよ、これは。俺らそのものだよ。これは俺の勝手な思い込みか?  でも、そんな思いをもって、僕はあんたの時代とあんたの愛した国と文化とつき合ってみたいんだ。うまく付き合えるかな、俺ら?  そして、互いが互いに「しっかし、結局はくだらねーなー!」って笑いあえるかな…。だって、男装の麗人だぜ? おおらかにもほどがある。 でも、シビアなところはシビアだし。ねえ、ゴルドーニ、もう呼び捨てでいい? 友達にならない? いろいろ教えてほしいんだ。で、いろいろ教えたいこともあるんだ……。
 まあ、いつものごとく、こんな勝手な「つき合い方」からはじめてみよう。




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